自然の中で登山をするのって気持ちよいものです。
それに登山は健康のために理想的な運動のひとつであるのも知られています。
自然の中を悠々と歩くのにあこがれていたり、友達に誘われていたりと、一度は登山に行ってみたいと思っている人は多いのではないでしょうか。
しかし、中高年を過ぎてから登山をはじめるとなるといろいろ心配なこともあります。
- 体力が持つのだろうか
- 誰かに迷惑をかけてしまわないだろうか
- どんな服装で行ったらいいのかな
- 登山道具は何が必要なのかな
- ケガをしないだろうか
そんなことを心配するあまり、結局登山を始めることができないなんてこともありがちな話。
この記事では安全で快適な登山をするうえで最低限必要な知識を分かりやすく解説していきます。
中高年を過ぎてから始める登山 絶対に必要な知識
若い時と違い、中高年を過ぎてから登山を始める場合、体力や判断力やバランス感覚などの衰えを無視するわけにはいきません。
ちょっとした油断で、楽しいはずの登山がとても後味の悪い思い出になってしまいます。
ここで私の自己紹介を軽くさせていただきます。
私、大和げんぶは1966年生まれで49歳の時フーコ師匠のすすめで登山に出会い、地元神戸の六甲山を中心に毎週登山と低山ばかりですが、その後8年連続100ピーク登頂をしております。
そして登山の楽しさをたくさんの人に知ってもらいたいと思い、現在まで60回以上の登山ツアーを開催してきました。
40才代、50才代、60才代の運動経験が少ない方は最初は尻込みをします。
しかし一度登山ツアーに参加すると、自分にもできるという自信を取り戻し、さらに自然の素晴らしさを堪能して、すごく喜んでいただけます。
私は参加者さまに安全に登山を楽しんでいただけるように、出来るだけ登山の基礎知識をお伝えするようにしてきました。
その結果、おかげさまで8年以上どなたもケガやリタイヤすることなく登山ツアーを行ってきました。
お伝えしてきた登山の基礎知識は次の5つです。
- 登山靴の大切さ
- 登山服のレイヤリング知識
- ザックの選び方
- 登山で最低限必要な持ち物
- 登山のルール・マナー
この記事ではこの5つの登山基礎知識のなかで、50歳以上の方が登山初心者に特に覚えてほしいポイントを徹底解説していきます。
登山靴選びは50歳以上のゆるり登山でも大切
登山靴・ウェア・ザック選びは非常に大切です。
ここだけは値段よりも、機能を調べたうえで、自分が愛せるかということも念頭に入れて選んでください。
なぜなら、登山専用のアイテムは安全のために考えられた機能が充実していて、さらにお気に入りのアイテムを選ぶことで登山が断然楽しくなるからです。
その中でも登山靴選びは本当に大切です。
安全に登山するための要と言ってもいいでしょう。
とはいえ私も認識が甘かった一人です。
まあ軽い登山なら運動靴でも大丈夫だろうなんて思っていました。
実際、最初に連れて行ってもらった山は低山だったので、前から履いていた運動靴で行ったのです。
沢沿いのコースは気持ちのいい緩やかな登り下りが続くだけ。
しかしどんな緩やかなコースでも、自然の中なので少しは急な登りや下りはあります。
そういったところでフーコ師匠たちはスイスイ行くのに、運動靴の私だけズリズリ滑って非常に歩きにくかったことを覚えています。
完全に自然をなめていた私の認識不足のせいでした。
そんな経験から、最初に買ったアイテムは登山靴でした。
では運動靴と登山靴は何がそれほど違うのでしょうか。
その秘密は靴の頑丈さと、ソールにあったのです。
靴の硬さとカットの高さ
登山靴は運動靴にくらべ、カットが高く頑丈な作りになっています。
これは勾配が大きい山道を、靴全体で体と荷物の重みを支え均衡を保つ必要があるからです。
中高年以上の登山初心者は、あまり険しい山に挑戦する機会は少ないと思いますので、最初のシューズは軽登山用のミドルカットシューズをお勧めします。
ミドルカットシューズは足首をガッチリ固定する高さまであるハイカットシューズより少しカットが低い登山靴です。
そのためミドルカットシューズの方がハイカットシューズよりも足首に柔軟性があり、かつ紐の締め方で足首のホールドを調整することができます。
私は二足目にハイカットのがっちりした登山靴を買って失敗しました。
きつい山道を登るのにはいいのですが、ゆるい登山が主でさらに街歩きが多かったので、靴の底が硬くその反発で足の裏が痛くて非常につらかったのです。
まず、軽登山用のミドルカットシューズを履きつぶすくらいに履いて、レベルアップしたら新しい登山靴を探してみてください。
ちなみに、登山靴は登山用の分厚いソックスとセットで足全体を包み込んで保護する構造になっているので、ソックスと登山靴の同時購入をおすすめします。
ソックスはかなり厚みがあるので、普段はいている靴のサイズより1インチから1.5インチ大きめのサイズで、足幅が狭い人はEE、足幅が広い人はEEE以上の靴を選ぶようにするといいでしょう。
安全性を高めるソールの硬さとすべり止め
登山靴の大切な要素のもうひとつはソールです。
登山靴のソールは硬くてあまり反らない構造になっています。
これはゴツゴツとした岩場でも硬い靴底のおかげで平坦を保つよう設計されているからです。
そしてソールの底は縦横に深い溝が入っていて、前後左右のあらゆる方向に対応したすべり止めになっています。
私の登山靴の裏は小さめのキャラメルが並んだような構造になっています。
軽登山シューズは、比較的ソールが柔らかいのですが、それでも手で簡単に曲がる運動靴のソールとは比べ物にならないほど硬いです。
初めて登山靴を買って手に持ったときにはすごく硬くて重く感じました。
しかし実際登山にはいていくと、靴が勝手に歩いていくような不思議な感覚になり、衝撃を受けたのを思い出します。
登山服の基本はレイヤリングと素材
登山ウェアの基本はレイヤリングです。レイヤリングとは重ね着のこと。
山は標高が100m上がるごとに気温が0.6度下がります。低山といわれる1000mの山でも6度も気温が低いのです。
そのうえ風が吹いていたら、風速1メートル強まるごとに体感温度は1度下がります。
汗をかいた体は止まれば途端に冷えてきます。
それを防ぐのが登山ウェア特有のレイヤリングという技術。
暑い時は薄着で、温度に合わせて上着を羽織る。
風や雨などの急な天候の変化にも速やかに対応する。
そのためには素材を理解することも大切。
ちなみに登山では綿素材はNGです。理由は濡れたまま乾きにくいため、汗冷えを起こし、体温調整ができなくなるためです。
快適に登山を楽しむためにレイヤリングの知識は重要なポイントです。
レイヤリングはベースレイヤー、ミドルレイヤー、アウターレイヤーの三層構造になっています。
ベースレイヤー
ベースレイヤーは一番内側に着るシャツやインナーのことです。
目的は透湿と速乾。
肌に一番近いところに着るので、汗を吸収して発散させるのが重要です。
素材はポリ繊維かウールが主流です。
肌ざわりの良さも大切です。
ミドルレイヤー
ミドルレイヤーはベースレイヤーとアウターレイヤの間に着る、中間着のことです。
目的は、透湿、保温です。
ベースレイヤーで逃がした汗をさらに外側に発散させる機能が大切です。
フリース、セーター、ベスト、ダウンジャケットなど。
ダウンジャケットは濡れると保温機能を失いますので、登山ではアウターレイヤーが必要になります。
素材はやはりポリ素材かウール。
アウターレイヤー
アウターレイヤーは一番外側に着るウェアで、シェルとも呼ばれます。
目的は、保温、防風、防水。
登山用のジャンパーという感じです。
暑い時期で天候が安定している日にはソフトシェルとよばれるポリ素材の軽いアウターレイヤーでも構いません。しかし、防水機能は思うほど高くはありません。
基本は、ハードシェルと呼ばれるアウターレイヤーを持っておくと安心です。
転倒時もしっかり体をガードできる頑丈さと、保温、防風、防水機能もしっかりしています。
素材はナイロン、ポリ素材、ゴアテックスです。
軽登山に最適なザックの選び方
ザックは、リュックサック、バックパックなどとも呼ばれます。
街歩き用のザックと違い、ショルダーハーネス以外にチェストハーネス(胸のベルト)、ウエストハーネス(腰のベルト)がついていて、特にウエストハーネスで荷物全体の7割の重量を支えます。
ザックのサイズはそれぞれの使用目的によって選びます。
サイズ別の使用目的を説明します。
日帰り登山
20リットル~35リットル
暖かい時期の軽い登山くらいならこの容量で行けます。
山小屋登山
35リットル~50リットル
山小屋箔や縦走登山に良いサイズです。着替えや調理器具な食料がしっかり入る容量です。
テント泊登山
50リットル以上~
テント泊に最適。食料や食器、テントや寝袋などが入る容量です。かなりの重量になります。
中高年を過ぎてからの登山初心者にピッタリのサイズは?
中高年を過ぎてから登山を始める場合、ちょうどいいザックの容量は30~35リットルです。
中高年以上のの登山初心者には、どれほど体力に自信があるからといっても、体調が崩れるほどきつい登山はお勧めしません。
時間をかけていろいろなシチュエーションの登山を経験して、きついコースに挑戦できる体力になってから、新たにザックを買うとよいでしょう。
小さなザックをサブで持っていてもいいのですが、常用使いには冬の着替えや食料持ちの登山でも余裕がある30~35リットルのザックを初めに用意するのがベストです。
中高年を過ぎてからの登山~ルーティンとして装備すべきもの
少し登山を経験してくると実力以上にあらぬ自信を持ってしまうもの。
少なくとも私はそうでした。
食料や飲み物などしっかり持ったから大丈夫と自信満々で単独登山に出向き、あれがなくて失敗したという経験をたくさんしてきました。
そんな失敗もあったせいで、あらためて学んだルーティンのように持っていくべき必要最低限の物を説明します。
救急キッド
安全そうに感じる登山でも救急キットは持っておいてください。
特に多いのは転倒時の打撲や傷。ひどい場合は骨折なんてことも考えられます。
もちろん頭痛や腹痛の対策も大切です。
登山では最低限の応急処置、ファーストエイドは自分ですることになります。
救急キットとして販売がされていますが、ファーストエイドとしては余分なものも多いと感じる人は、自分で用意するといいでしょう、
- 消毒薬
- 胃腸薬・鎮痛剤
- 絆創膏
- エマージェンシーシート
- 毛抜き
- ハサミ
- 虫刺され薬
- 包帯
- ガーゼ
水
お茶やジュースだけではなく、必ず水を持っていきましょう。
飲料としてだけではなく、傷の洗浄、嘔吐時に食道内の洗浄で必要。
お茶などは酸化を強める可能性があります。
日本手ぬぐい
日本手ぬぐいは縦に避ける構造になっていて、包帯や三角巾、裂いて結び合わせばロープとしても使えます。
古い靴の靴底がパカっと口を開いてしまった時の応急処置にも役立ちます。
ビニールテープ
服や靴やザックの破損時に使用します。
ケガの応急手当でも有効。
道に迷った時には目印として木に巻き、堂々巡りにならないためにも役立ちます。
ダブルポール
整体師の私から見て、まず、シングルポールは必ずどちらかに体が傾きます。
傾いた姿勢を長く続けていると、片側の足や腕に負担がかかり、ひどくすると調子が悪くなったり、どこかを傷めたりします。
50歳を過ぎて登山をする場合は、必ず持参してほしいのがダブルトレッキングポールです。
ダブルトレッキングポールをお勧めする理由は次の通りです。
- 転倒防止
- 疲労防止
- リュックの左右の揺れを軽減
- 歩行速度が安定
- 長距離歩行を可能にする
- 足を痛めた時に補助
これらのメリットがあるため、疲れにくく、ケガ予防になり、長く歩いても余裕があり、同行者から遅れず迷惑をかけません。
※ヘッドライト・モバイルバッテリー・折りたたみ傘なども携帯すると安心です。
安全登山のルールとマナー
登山では先人たちが伝えてきたたくさんのルールやマナーがあります。
それらは本当に貴重なものばかりです。
ここではその中でも安全登山をするためのルールとマナーを解説します。
すれ違いのルール・マナー
★山側に避ける
止まって避ける時は山側で待ちましょう。
谷川に避けてしまうと、すれ違うときにザックが当たり滑落する危険があります。
★下りの人が避ける
登りはペースを変えにくいので下りが避けるようにしてください。
それに下りの人の方が先に気づく可能性は高いからです。
★人数が多いグループが避ける
基本、人数の少ない方が動きが軽く早いものです。
人数の多いグループ登山の時には、山側に避けて速やかに通ってもらえるように道をあけましょう。
※なお、これらすれ違いのルール・マナーはあくまで基本です。実際の状況においては安全な場所が確保できるかを考えて臨機応変に避けるようにします。
あいさつをする
山ではみんなあいさつを交わします。
安全のために特に大切な理由は次の4つです。
★先の登山道の危険などを聞くきっかけになる
★体調不良など話すきっかけになる
★前を行く人を追い抜く時の警笛が代わりになる
★事故や遭難があった時に覚えていてもらえる可能性がある
あいさつは何気ない行為ですが、登山者同士のあいさつは本当に大切なのです。
時々挨拶を返さない人もいますが、その人はルールやマナーの意味をまだ知らないだけだな、と考えサラッと流して上げましょう。
中高年を過ぎてから始める登山ー知っておきたい5つのポイントまとめ
50歳を過ぎると、若い時よりも体力やバランス感覚や危機回避能力が下がります。
安全に楽しく登山をするために、ぜひ知っておいてもらいたい知識をこの記事でお伝えしました。
最後にもう一度まとめを書いておきます。
★登山靴の大切さ
中高年以上の登山初心者が選ぶ登山靴のおすすめは、ミドルカットの軽登山靴。
分厚い登山用ソックスと購入するのがよい。
実際の足のサイズより1インチ~1.5インチ大きめのサイズを選ぶ。
足幅が狭い人はEE、広い人はEEE以上。
★登山服のレイヤリング知識
登山では汗冷えや体温が上がり過ぎないように、レイヤリング(着重ね)をする。
レイヤリング理論は3層構造。
ベースレイヤー・・・内側のシャツやインナー。目的は透湿、速乾。素材はポリ素材、ウールなど。
ミドルレイヤー・・・フリース、ベストなどの中間着。目的は透湿、保温。素材はポリ素材、ウールなど。
アウターレイヤー・・・一番外側に着るジャンパーなど。目的は保温、防風、防水。素材はナイロン、ポリ素材、ゴアテックスなど。
★ザックの選び方
中高年過ぎてからの登山初心者は日帰りか山小屋箔などの登山が基本になるため、30~35リットルのザック(リュック)がおすすめ。あまり小さいと食事や上着などが入りにくい。
★登山で最低限必要な持ち物
慣れた山でもルーティンとして最低限持参すべきもの
救急キット・・・どんな山でも油断禁物
水・・・あらゆる洗浄に使える
日本手ぬぐい・・・包帯・三角巾・ロープ・靴の補修など便利
ビニールテープ・・・ザックや靴の補修、道迷い防止の目印として使用
ダブルポール・・・長距離の歩行補助、ケガをした時の松葉杖代わりにもなる
★登山のルール・マナー
すれ違い・・・登り優先、少人数優先、山側に避ける
挨拶・・・先の道の危険や体調不良の話などをするきっかけ、警笛替わり、事故や遭難に合った時に覚えていてもらえる
以上、中高年を過ぎて登山を始める場合、最低限覚えておくべき知識について解説いたしました。
この記事で、年齢を理由にあきらめていた人や、何となく機会がなかった人など、少しでも多くの方に登山を始めてもらえればとてもうれしく思います。
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